Memoria — 写真の中に、ワールドへの道を残す

VRChatで撮った写真をSNSに上げるとき、そこに写っているワールドについて、わたしたちはどれくらい語っているだろうか。

構図の話、ポーズの話、光の話。そういうものはよく語られる。けれど、その光を作っているのはワールドの側だ。空の色も、水面の反射も、立っている床のマテリアルも、全部ワールドクリエイターが作ったものの上に乗っている。写真がどれだけバズっても、そのワールドに人が訪れるとは限らない。むしろ大半は、キャプションにワールド名すら書かれないまま流れていく。

撮影者はワールドに頼り切っているのに、その恩恵がワールド側に還っていく仕組みがほとんど無い。Memoriaを作り始めたとき、ここをどうにかしたいという気持ちが根っこにあった。

「ワールドリンクQRコード」は初日からあった

Memoriaは、VRChatのスクリーンショットにフレームやキャプションを付けて書き出すツールだ。メイン機能を実装したその日のうちに「キャプション情報の並び順見直しとワールドリンクQRコードを追加」というコミットがある。機能として後から足したものではなく、最初から入っていた。

撮影時に埋め込まれたメタデータからワールド名を読み取り、キャプションと一緒にQRコードとして焼き込む。読み取るとそのワールドのページに飛べる。SNSに流れた一枚の写真が、そのままワールドへの入り口になる。

QRコードだけ、やたら手をかけている

QRコード機能実装後の数日間のコミットを見返すと、QRコード周りの調整だけがずっと続いている。

リンク先をVRChat公式の短縮リンク形式(vrch.at)に変えたと思えば、誤り訂正レベルをM→Lに下げてモジュールを粗くし、サイズを大きくして、周囲の余白を詰め直す。写真に重ねて配置するモードでは、白黒反転を試して機能しないことを学び撤回し、代わりにハーフトーン合成で写真の色に馴染ませる方式に落ち着いた。均一に暗い写真だとノイズっぽく見える不具合を直し、馴染ませる強さを0.6から0.85まで上げ、それでも読み取れるだけの安全マージンは死守する。QRの周囲に必要な余白も主役の写真の存在感を奪わないよう、規格の半分まで削っている。

キャプションのテキストに合わせて位置・サイズを追従させる仕組みまで作った後、一度は「配置モードを選べるようにする」機能を追加し、数日でその選択肢自体を削除してもいる。選べることよりも、常に自然な位置に収まることを選んだ形だ。

一つの補助的な要素にしては、明らかに時間をかけすぎている。他のどの機能よりも往復した回数が多い。それだけ、「読めることと、写真として破綻しないことの両立」にこだわりたかったのだと思う。QRコードは便利機能である前に、写真の一部として溶け込んでいる必要があった。

SNSに投稿するときの一手間を減らす

QRコードは写真を開いた人向けの導線だが、投稿する側の一手間も減らしたかった。あとから「ワールド名・URLのコピーをワンボタンにまとめる」機能を追加している。SNSに投稿するとき、ワールド名とリンクをキャプション欄にそのまま貼れるようにするためのものだ。

QRコードを読み取ってもらうところまで期待しなくても、投稿文にワールド名が一言添えられているだけで、検索した誰かがそのワールドにたどり着く可能性は残る。読み取ってもらう経路と、言葉で伝える経路の両方を用意しておきたかった。

効果があるかは、正直わからない

ここまで書いておいて言うのもなんだが、QRコードを実際にどれだけの人が読み取っているのか、コピー機能がどれだけ使われているのか、Memoria側では計測していないので実際のところはわからない。

ただ、VRChatのフォトカルチャーの中に自分自身が身を置いていて、素晴らしいワールドで撮った写真が、ワールド名すら書かれないままSNSを流れていくのを何度も見てきた。その度に、撮影者とワールドクリエイターの間にあるはずの結びつきが、投稿の瞬間にぷつりと切れてしまっているように感じていた。

Memoriaがその切れ目に、細い糸を一本残せるツールであってほしい。QRコードを読み取る人は少数かもしれないし、コピーしたワールド名を律儀に投稿文に残す人も少数かもしれない。それでも、標準の書き出し結果に最初から組み込んでおくことに意味があると思っている。オプションで用意して「使いたい人だけ使う」形にはしなかった。


MemoriaはBoothで頒布中です。